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着物のあれこれに使われる【素材】について知ろう

2020/04/12

【この記事は約 12 分で読めます】

実際に着物を入手する前に、着物の「素材」について詳しくなっておきましょう。

知らなくても困らないといえばそうですが、知っていると選ぶときに便利です。

それぞれの素材ごとの特長を大まかに書いています。
単体の素材の他に混紡(2種類以上をより合わせたもの)もあります。

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いわゆるシルク。着物といえば絹、というくらいにメジャーな素材です。
着物の用語では絹100%の意味で「正絹(しょうけん)」という言い方もします。
「正絹でなければ着物にあらず」と豪語するような着物屋さんもあります。
(それはどうなんだろう)

着物本体の他、羽織、袴、帯といった主要なパーツの中でも
高級品なら当たり前のように素材が正絹で出来ています。

蚕(かいこ)という虫の繭から採る動物繊維のため、肌触りがとても良いです。
また天然繊維なので保温性・吸湿性にも優れていて、さらに軽い、と良いことずくめ

しかし水に弱いという欠点があり、家で水洗いするのはかなり危険
また高級品に使われる素材ということで、他のものよりも値段は高くなります。

良い点:

  • 肌触りが最高
  • 保温性や吸湿性に優れている

悪い点:

  • 水に弱い
    (特に、水に濡れた状態で擦れるとすぐ毛羽立ちます)
  • 家で洗濯できない
  • 変色しやすい
  • 高価である

綿(木綿)

正絹が高級品の素材なら、木綿はその対極にいる庶民の素材と言えるでしょうか。
江戸時代に日本国内での栽培が始まった植物繊維で、
その当初は絹よりも高級品だったそうですが、
現在ではごくありふれた、一般的な天然素材となっています。
洋服でも、Tシャツだったりなんだり、木綿のものに触れたことがない人はいないはず。

「木綿の着物」もありますが、どちらかといえば浴衣の方が馴染み深いように思います。
他には、足袋、肌着、腰紐など直接肌に触れるものは木綿が多く使われます。

正絹が「てろっ」と柔らかいのに対して、木綿は「ぱりっ」とした風合いです。
そのため、正絹よりは少々厚く、また硬く感じる人もいます。

良い点:

  • 天然素材なので肌にやさしい
  • 水洗いができて、丈夫
  • 比較的安価

悪い点:

  • 少し硬く、厚ぼったく感じられる
  • 洗濯すると縮みやすい
  • 皺になりやすい

ポリエステル

安価な着物で使われることが多いのが化学繊維(化繊)のポリエステルです。
実際にはポリエステル以外の化学繊維のものもありますが、
ひとまとめに「ポリエステル」と呼称されていることが多いです。

木綿の着物よりさらに安価なので、
初心者向けのセットの着物などは専らポリエステルです。
またプリント柄の発色が良いので、普段着用の小紋などでは
敢えてポリエステルを採用しているものがあります。

技術の発展により、正絹のような風合いのものなども開発されていて、
化繊だからといって侮れません。
東レが開発した「シルック」という生地が有名です。

洗濯機に入れて洗うことが出来るので、気軽に着物でのお洒落を楽しむことができます。

しかしやはり、本物には勝てません……。
化学繊維であるが故に吸湿性があまり良くなく、汗でベタベタに感じることがあったり、
静電気が起きやすいという欠点があります。
また、ツルツルと滑りやすいので、実は着崩れしやすいんです。

良い点:

  • 安価である
  • 柄の発色が良く、鮮やか
  • 洗濯機で洗える

悪い点:

  • 吸湿性が良くない
  • 静電気が起きやすい
  • ツルツルしていて着崩れしやすい

先ほどの項目で、木綿は江戸時代に日本で栽培が始まったと書きましたが、
それ以前の庶民の素材が、麻でした。

宮古上布(沖縄)、越後上布(新潟)、能登上布(石川)など、
麻の細い糸を使った織物が、日本各地で特産品になっています。

こちらも天然素材ですので肌にやさしいのですが、
涼感があるため、現在では主に夏用の着物や小物などに使われます。

良い点:

  • 天然素材で肌に優しい
  • 吸水性に優れる
  • 丈夫である

悪い点:

  • 皺になりやすい
  • 上布はやっぱり高い

ウール

ウールとはつまり羊毛。
厚みのあるもこもこした生地で、こちらは専ら冬に用いられます

昭和までの時代なら、普段着用のメンズ着物としてウールのものが多く見られたそうですが、
現在はそういう需要もなくなったので、絶滅危惧種というくらい少なくなっています。

ただ、リサイクル着物を探していると結構な頻度で見かけます。
長く保管されていたウールの着物は高確率で虫食いの跡があるので、気をつけましょう。

良い点:

  • 保温性に優れる
  • 天然繊維である

悪い点:

  • 厚ぼったくなりがち
  • 虫に食われやすい

モスリン

モスリンは素材の種類というより織物の種類なのですが、
素材は羊毛や綿が多く使われます。

ちょっとケバケバした手触りの生地で、長襦袢に使われている事が多いです。

良い点:

  • 天然繊維である
  • 保温性にやや優れる

悪い点:

  • ちょっとチクチクする

「革の着物」というものがないわけではありませんが、
どちらかといえば小物類に多く使われている素材です。

男の着物では、帯、雪駄、バッグ、羽織紐でよく見かけるでしょうか。
あとは、激レアですが革の足袋などというのもあります。

良い点:

  • 使うほどに馴染んで風合いが出てくる
  • カッコイイ

悪い点:

  • こまめな手入れが必要
  • 分厚く、重い

おもだった着物の「素材」について解説してきました。
本当は、それぞれの中でも織り方によって特定の名前が付いているものがあるのですが、
それはまた、必要な時に覚えていけば良いかと思います。

「初めての1枚」を買うにあたり、せっかくだから着心地の良い正絹を選ぶか、
もしくは気軽に楽しめるポリエステルのものにするか、
あるいは間を取って木綿のものにするか、
そんなようなことを思い浮かべて、ワクワクしてみてください!

では皆様、良い着物生活を!
かしまさでした。